またたびチャンス!⑥
花袋に戻って、簡単な夕食をとり、好きなだけ本を読んで、
いつもは聞けない音楽を聴きます。
(家では、猫のハチさんが、音に敏感で怖がるので自由に聞けず。)
夜、灯りを点けていると、窓の障子越しに、ビシバシ何かが当たる音がする。
・・・虫?
BBCには雨戸がなく、また木製の木枠の窓なので、少しのゆがみを抜けて、
虫が直接、室内の障子を、外から叩いているのでした。
ブブブブブブブブブブブブブ・・・・・!
ありゃ~、アブかなにかが、入ってきてしまった。
ベッドの上に立てば、電灯にいるところを捕まえられそうです。
ビニールの内側に手を通して、パッとつかんで、ビニールの口を閉じます。
・・・・刺されなくてよかったけど、たぶん、日中障子を開けた時に、
反対側がきっちり閉まってなかったのかもしれない。
前回来た時は、4月のはじめ。今回は、5月のおわり。
時期が違えば、こういうことも起こる。
もし、興味があって宿泊される方は、障子の締りにはお気を付け下さいませ。
1時間いつもより早めに寝たのに、ぴったりいつもと同じ睡眠時間で、
夜中3時に目が覚める。
人の体内時計って、おそろしい。
結局、それから寝付けず、本などを読んで、朝風呂へ。
私は、寝癖がひどいので、それを直さねばなりません。
誰にも会わないようにしながら、テイの湯へ。
夜からかなり雨が降っていて、朝もやの中、テイの湯から流れた湯気が上がっています。
去年は、真っ青な空の下、泳ぐ鯉のぼりが見えた芹川も、
今朝は、ちょっと寂しげです。
というか、こんな雨の中、風呂に行こうと誰も思わなかったらしく。
やっぱりテイの湯、ひとり占めでした。
・・・飲食店にはフラれまくってしまいましたが、温泉に関しては
貸し切り、独占状態。
これはこれで、・・・・よし!として良いのかもしれません。
朝食は、お粥セット。去年とちょっと違います。
(みそ玉は同じ。あまり食べる機会がないのでうれしい。希望すれば、お粥→白米のご飯も。)
(こちらは、去年の。)
BBC長湯は、最大30泊できる湯治宿でもあるので、少しづつ違うのかもしれません。
8:00、8:30と時間が選べて、受付時にOKすれば、10分前くらいに届けられます。
(こちらが気にすることではないのですが、微妙な時間差って気を遣うだろうな~と思います。
お盆に持って、各離れを回るのは、雨の日なんかは大変そうです。)
朝食を頂いて、チェックアウトをすませ、あさイチで万象の湯に行ってみましょう。
以前行ったときは混んでいたので、開店早々なら、ちょっとはいいかもしれません。
昨日の夜から降り続いて、今日一日、ずっと雨の予想。
外で待つのもなんなので、開店までの数分を、車の中でつぶすことにしました。
・・・ところが、後から後から、じゃんじゃん車が来る。
しかも、結構なスピードで駐車場に乗り入れ、慌てて車を駐車し、
自前のお風呂セットを持って、(開店前のはずなのに)建物の中へ消えていきます。
???????
これは、先に来たからこっちが先なんて雰囲気じゃないぞ??
気が引けましたが、とりあえず受付くらいには行ってみましょう。
受付で、「昨日ラーメン屋さんで食事をしたんですが、割引券もらい忘れて。
レシートでもいいですか?」と聞くと、
「どちらかというと、レシートの方がいいくらいですよ」と快諾して頂きました。
う~ん、やっぱり言ってみるもんだなぁ~。
数百円と言えど、積もれば違うはず。恥ずかしがらず、言って良かったです。
それで、肝心のお風呂なのですが・・・。
地元の方が結構いて、ちょっと居心地悪かった。
万象の湯の内湯は、落花生の殻のような、大小の湯船がくっついた形をしていて、
大きい方が熱めのお湯、小さい方が冷たい、泡がつく炭酸泉になっています。
熱い方で体を温めた後、冷たい方に入ったり、露天湯に行ったりして、
交互に入って、長くゆっくり浸かることで効果がでるそうです。
その落花生のくびれの所に、地元の方が占拠していて、大声で話しているので、
冷たいお湯に入ろうとすると、落花生の周りをぐる~っと回って、
遠慮がちに入らないといけません。
わぁわぁ大声で話している間を割って入って、湯船をすっぽんぽんでまたいで入るほど、
さすがのワタシも、そこまで肝が太くない。
旅館で夜勤で働いて、その帰りなんでしょうか。
こちらは夜勤で疲れてんだ!気楽な観光客とは違うんやけ、良い場所は地元のもん!
・・・なのかなぁ。
せっかくの良いお湯で、みんな同じように料金を払ってるので、お互い譲り合って気持ちよく過ごせれば良いのですが、なかなか上手くいかないこともあるもんです。
仕方ない。そうしたくなる何かがあるんだろうし、私がそこに責任を負う必要は全くない。
露天風呂も雨だったので、落ち着かず。
そうそうに引き上げることにしました。
長湯にはたくさん、日帰りで入れるお湯がありますが
返す返すも、テイの湯で嫌な思いをしたことがない。
それは、老舗旅館としてのキリっとした何かがそうさせるのか、
事情を知らない同士、【おたがいさま】の距離をきちんと保てる雰囲気があります。
みんな、生きていれば色々あって、
その大変度合いも、力量と条件で全く違う。
大変なほど、エライなんて世の中になったら、
認められたいがために、自分がどんなに大変かばかり口にしないといけない。
そんな苦労自慢、大変自慢しか口にできない世の中ってどうなんだろう。
大変大変と大声で言う人が、一番大変かなんて計りようもないことです。
(我慢強くて、愚痴ひとつ言わない人だっている。)
そんな中で、訪れた先で出会った素晴らしい景色や、おもしろかった本、感動した映画、心が震えた音楽の話をすれば、
「そんなヒマあっていいね」となる。
その行きつく先は、人前でうっかり休むことも、息をつくこともできないギスギスした社会であり、
常に他人が自分よりラクしていないか、楽しんでいないかを見張る社会であり、
そんなお互いを監視し合う世の中で、いつ息をしたらいいんだろう。
役に立つことばかりが、もてはやされる社会で、
常に自分自身にも、他人にも、使えるか使えないかでジャッジされていくそんな社会で
存在意義すら、誰かに勝手に決めつけられる。
役に立たないものは、生きている意味がないなんていう。
その言葉が、他人にも自分にもどんなに、毒になるか分からないのに。
お互い、事情を知らない者同士、なんにも分からない。
何にも知らないんだから、思いやって、分け合って、譲り合う。
その余裕がないのは、ギスギスして、ガチガチになっているからかもしれない。
芸術・文化はビタミンのようなものだと、誰かが言っていたのですが
そういう意味で、円滑油のようなものかもしれない。
多すぎてもいけないし、全くなければ、上手く回らなくなる。
どちらかに偏りすぎることがないよう、心がけたいと思います。
「万事うまくいかない」はずの旅に出て、
確かに思っていた通りにはいきませんでした。
だけど、全く全部がダメってことはなかったです。
それはそれで面白かったし、
思い通りにはいかなかったけれど、思いがけないウレシイこともありました。
人生もそうなのかもしれない。
望んだものには選ばれず、拾われた先で頑張る以外方法がなくても、
それはそれで、なんとか今生きているんだから、
ありがたがって、おもしろがって
右往左往していいんじゃないかと、思います。
これで、またたびの話はおしまいです。
長々しつれいしました。そして、ありがとうございました。