卒業の日に
先日、みやこ町のお家の撮影に伺いました。
うまいタイミングで、庭に花があれば、それを持参します。この日は、一重のヤマブキとピンクユキヤナギをプラスできました。
桜が咲く前に咲きだす、寒い時期にありがたい花です。
飾るための花を活けていると、遠くから音楽が聞こえる。
ゆずの『栄光の架橋』でした。
「・・・卒業式かな?それとも練習かな?」
静かなので、風に乗って聞こえてきたのかもしれません。
お客様の中にも、この前卒業式だった!という方が
いらっしゃるかもしれませんね。
私事ですが、わが家の次男坊もこの度高校を卒業しました。
小さいころ、発達障害の疑いがあるかもしれないと言われた子でした。
重度ではないからと、特別な療育をうける機会もなく、
もっぱら私が気に入りの絵本を何百回と繰り返し読んで、
出てこなかった言葉を、少しづつ覚えてきました。
ただ、所作や言葉、人との距離感に
彼独特な感じがあるので、違和感があったのでしょうか。
小学校時代には、一時期いじめの対象にもなり、
おだやかではあるものの、なかなかこれといった友人もできず。
母親としては、「ひとりでいること」は全く恥ずかしいことでも何でもなく、
たまたま親が選んだ土地で、同じ世代だからって
気が合う合わんは別の話で
本当に気が合う人なんて
少なくて
だからそんな人に会えたら超ラッキーなんだから
大事にしたらいい。
ひとりでいても、堂々としてる方が
カッコいいんや!
ひとりの時は、ひとりでできることを楽しんだらいいし、
みんなの時は、みんなでできることを楽しんだらいい!
・・・とか何とか、彼が決して
自分をみじめだと決めつけないように
声かけをしてきました。
小さな子のお世話をするのが好きな子だったので、
6年生になると、1年生の教室にちょくちょく顔を出して、遊んでいたようです。
他の6年生は、同学年の友達と外で遊んでいるのに
ちょくちょく(呼ばれもしないのに)顔をだす次男に
1年生の担任の先生が
「○○君、いっつも来てくれるんですよね・・・」と、
ちょっと困惑したように言われたこともあります。
・・・うん。先生のおっしゃりたいこと、よくわかります。
そりゃ、・・・なんで?と言いたくなるでしょう。
彼は、そんな空気が読めない。
同じ学年の子と一緒に遊ばんと、友だちおらんのかって思われる・・・。
とか、まず考えない。
よっぽど嫌な顔をしない限り、1年生の担任の先生の
微妙な表情なんて、まず気づかない。
ところがです。
その彼が小学校を卒業する時。
割と小規模な学校なので、
在校生が向かい合って並んで、手でトンネルをつくり、
その中を、卒業する6年生が通り抜けていくという伝統があります。
トンネルの入り口側に、5年生から並んで、
出口には、1年生が並びます。
雨の日だったので、出口もちょうど1年生の教室前でした。
出口側で写真を撮るべく、待ち構えていると、
出てきながら、ニコニコ笑顔の息子。
息子が通ると、何人も、何人も、
1年生が彼に抱きついています。
「▲▲さん・・・。」
ふと声をかけられて、顔を上げると、
あの1年生の担任の先生です。
「本当に、子ども達が、あんなに○○君を慕ってて・・・
本当になんて言っていいか、感激して・・・
ありがとうございました・・・」
と、ボロボロ泣いておられたのでした。
・・・いやいやいや!こちらこそ、なのです。
なんだかビミョーな感じだったのを、変だとか何とか言わず、
先生が見守っていてくれたから、
最後の最後で、こんなプレゼントを頂いているんです。
ありがたいのは、本当にこちらの方でした。
その次男が、中学を卒業する時。
同級生で、支援学校に行くことになった子がいました。
次男も「なんでかわからん。勉強も普通にできよった。」と言うし、
どういう経緯だったのかよく分かりません。
色々複雑な事情もあるようでしたが、
「大人になったら働いて、きょうだいを呼び寄せて
一緒に暮らす」と言っていたようなので、
よほどしっかりした子です。
その子が、この春卒業に当たり、
卒業生を代表してあいさつしていたことが
新聞に掲載されていました。
「成長を続け、自分らしく生き抜く
幸せな大人になります。」
・・・◇◇くん。
そんなこと、大人でも考えつかないよ・・・。
そんな言葉、まず出てこないよ・・・。
目標達成とか、夢の実現とか、
社会の役にとか・・・。
誰でも言いがちなことを超えて、
なんて核心に迫った言葉だろう。
彼がこの3年間、仲間たちと過ごしてきて
何を思い、考えて来たかは分からない。
ただ、かかえる境遇がどうあれ、
その人らしく生き抜いて、しあわせだと感じられる大人になるということは
人が生きる上での、本質をついているんじゃないか。
いい大人になった私でも、彼ほどの視点で
これほどの的確な言葉で、
みんなの前で堂々と宣言できるだろうか。
支援学校に行くよう勧めた先生が、この言葉の意味がわかるだろうか。
「◇◇くん、本当に賢いのは君かもしれない。」
本当に脱帽でした。適わない。
色々な子が、
回り道をしてでも、色々な景色をみてきた子が、
何かと何かをつなぐ、かがやく架橋となりますように。
幸せに生き抜ける、そんな世界でありますように。
みなさん、ご卒業、本当におめでとうございます。